2011年03月24日

組織の高め方

オーケストラの指揮者は非常に強い権限を持っています。
似たように、先生と生徒の関係でも、先生は強い権限を持っています。
少し違うなと思うのは、指揮者は絶対なのに対し、先生はそこまで行きません。

ここで、絶対というのは抽象的です。
指揮者が絶対というのは「オレがこうだ」と言えば、理由なんか要らないということです。
もちろん明らかな違いを曲げることはできませんが、指揮者が「オレはこうしたい」と言えば、みんなは従うだけです。

音楽監督となれば、通常、人事権まで持っていますから、気に入らない奏者はクビにすることができます。
一例を挙げると、アメリカのクリーブランド管弦楽団を世界の一流までに育てた、ジョージ・セルという指揮者がいました。

彼は演奏の旅行中、ナチを恐れて、帰国するのをあきらめアメリカに永住することを決意し、クリーブランド管弦楽団の音楽監督になることを決意し、クリーブランド市も彼の要望を聞き入れました。
セルが就任すると、間もなく楽員の2/3が入れ替わったと言われます。

冷たいほど完璧主義者で、同オーケストラにいたあるヴァイオリニストは「セルは完全を求めるあまり、奏者をダメにする」と言っていたそうです。

一切、妥協を許さない態度は非人間的とも思えますが、セルが就任してから間もなく、オーケストラは評判になり、CBS-SONYが録音を申し出るなど、財政も豊かになりました。

harusai1.jpg「クリーブランドを知らない人は、音楽を知らない人だ」のようなキャッチコピーがあったような気がします。
残念ながら、私はセルの生演奏を聴くチャンスには恵まれませんでしたが、完璧主義者としてセルと気があって、よく同行していたピエール・ブーレーズの指揮でストラヴィンスキー「春の祭典」を聴いた時は驚いたというより衝撃を感じました。

指揮者は独裁者のようなものであり、そのような振る舞いをしている先生がいるかも知れませんが、全く同じではないと思います。
しかし、共通点は多いと思います。

さて、私はコンピュータのようにはいかない、集団を統率するということに興味を持ちましたが、基本的な指導の流れは、集団が混乱している時、いわゆる荒れている時には、直接あらゆることのリーダーシップを取りましたが、集団(ここでは部活動)が平和になるに従い、生徒たちに権限をなるべく譲るという方法を取りました。

リーダーは、チームの大勢を整え、制度を作り、人材を育てる。
そうしないと、継続的に部活動の活動は向上しない。
既存システムを見直し、現状のよくないところ、目標を睨みながら重要なところから手をつける。
部活動が順調に動き出したら、生徒でできるところは生徒に任せて、先生は先生でなければできない創造的な部分にエネルギーを費やすようにする。
士気が低下していると感じたら、コミュニケーションを取りながら改善をする。
活動の中で有能な生徒を発見したら、そういう生徒を生かすようにする。


まとめるとこのようになる。

吹奏楽部では、活動の状態がよくなってくる。具体的には音がきれいになってくると、おもしろいことに、部屋もきれいになってくることに気がついた。

ゴミは落ちていないようになるし、椅子のカバーが切られていたものが、縫ってある。
誰かが花を飾ったりする。
来客があると、自然に接待が行われる。

ある人にこんなことを言われたこともある。

「先日、お伺いしたときには、子どもがお世話になりまして」

私は全然知らなかった。
その人は、小さい子を連れてきたのだが、その子の世話を生徒がしたことでお礼を言われたのだ。

行きつけの楽器店に寄ったとき、こんなことも言われた。

「この間、学校の帰りに生徒さんたちが寄られて、部屋を貸してほしいと言うんですよ。何かなあと思いましたら、今日の練習で、先生が気に入らなかったようなので、練習をしたいと言われるんです」
楽器店の部屋は有料なのだが、楽器店の主人は、生徒たちの気持ちを汲んで貸してくれたようで、恐縮してしまった。

しかし、この学校に赴任した当時は順調とはいかなかった。
先輩や、吹奏楽の先生たちからは

「今度、○○中学校へ転勤だそうだな。でも、今いる生徒は捨ててかからなきゃだめだぞ」

と言われていた。
初めての年は、一生懸命やっても生徒たちには受け入れられないというのだ。
経験談を聞くと、例外なくひどい反発を食らったようである。
私は肝に命じて、適当に仲良くやっていこうと考えていた。

ところが、音楽室で並んだ生徒たちを見たとたんに「捨てるなんてことはできない」と思った。
何と言うか、表情とか目つきを見て、とてもそんなことはできないと感じた。

いろいろ頭で考えていても、人というものは、実際に面会してみないとわからないものだ。
だから、見たこともない会ったこともない人間を想定して、あれこれ言う人を私は信用しない。

変な話だが、我が家にはメス猫がいて、子どもを産んだ。
一度に5匹生む。これが1年に3回だから、毎年15匹の子猫が誕生する。
子猫をなんとしても、誰かにもらってもらわなければならない。

小さな商売をやっていたので、来るお客さんに。

「猫、もらってくれない?」

「ネコお〜!?」

欲しくないけどという感じだ。
すると、聞こえたのかどうかわからないが、親がスタスタとやってくる。
お客さんがそれを見て、

「このネコの子!?」

「そうです」

「ほんならちょうだい!!」

と、こんな具合で子猫がもらわれて行った。
我が家は猫の親戚がいっぱいになった。

猫、そんなものはいらない、と考えていても、実際に見ると気持ちが変わる場合があるのだ。

人が受け入れる情報は、文字や言葉だけではない。
実践者ならこういう感覚はよくわかるはずだ。

私は反発されても、部活動を真剣にやろうと思った。
まだ、コンクールで一度も代表になったことはなかった学校だった。
生徒たちは、そのことで近隣の学校にコンプレックスを感じていたようだった。

私としては、吹奏楽のコンクールは何か変と感じていたので、コンクールそのものはどうでもよかったのだが、代表になって喜ばしてやれないかと考えた。

それで、本気を出して練習にかかった。
そうしたら、先輩たちの言った通り、かなりの反発に遭った。
部活ノートというものを作っていたが、いろいろと書いてあった。

困ったことに、男子の部長は、先生が張り切っているということを喜んでいて

「先生は、練習を厳しくやると言っていたが、甘い。たるんでいるヤツは運動場を走らせると言ったが、全然やっていない」

と書いてきたが、女子は逆に練習が厳しいと批判した。
特に、女子はこういう時、グループになって団結するようだ。

ある日、準備室に行ってみると、机の上に封筒がおいてあった。
開けてみると、ある女子が書いたものだった。
「練習が厳しすぎるとか非人間的だ」などということが書かれており「これからもこういう練習を続けるなら、顧問として認めません」ということも書いてあった。

それは三年の生徒だったが、もうすぐ修学旅行という時だった。
私は、こんなことを書いて、修学旅行に行って、もし思い出して気にするようなことがあったら、楽しくないだろうとと思って、彼女を準備室に呼んだ。

彼女は深刻な顔つきでやってきた。
私は次のように言った。

「読んだよ。それで、先生は反省した。自分のよくないところがわかった。ありがとう。
直すようにしたいと思うので、これからもよろしくお願いしたい」

彼女がどう受け取ったかはわからないが、私としては一応、けじめをつけたつもりだった。

その後、国語の先生から「オー、やっとるな」と言われた。
何かなあ、と思ったら生徒たちは、作文で私の批判を相当書いたらしい。
その内容は見せてもらわなかったが、なかなか激しいものだったようだ。
そのせいか、生徒たちの作文力の向上に私はいくらか寄与したようだった。

この時は、まだ部員が少なかったので、コンクールのメンバーの半分は1年生で埋めなければならなかった。全員が1年生というパートもあった。
こういう状況だから、生ぬるい練習では勝てないと思ったので、練習はかえって厳しくなった。

それでも、なんとかコンクールの日を迎えた。
この地区は強豪が多かったが、結果は、なんと先輩たちの学校を差し置いて代表になってしまった。
発表のあと、3年生の女子たちがロビーで泣いていた。

私の指導がいいというわけではない。
私は、生徒たちと初めて会ったとき、この子たちはなかなかの者と感じたのだ。
真剣にやればかなりの力を発揮すると感じていたのだ。
中学生にしては、大人っぽいなあと感じていた。

次の日から、生徒たちの態度は一変した。
しかし、私は内心、代表になれなかったらどうしようと思っていたので、ホッとした。

女子生徒たちとも仲よくなれて、よかったと思った。

にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ


posted by edlwiss at 19:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育研究
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。