2011年03月29日

先生が人格を問われる時

ある高校で、吹奏楽の指導者として雇われた先生が辞めたいと言っているということで、その後任をやって欲しいという依頼があった。

練習を見に行ったら、生徒は二人しかいなかった。
練習に出て来る生徒が減っていったらしい。
何があったのかわからないが、指導の先生と生徒たちとうまくいっていなかったらしい。

とにかく引き受けてみることにした。
新学期が始まった。
この高校は八割が女子生徒で、女子高のようなものであった。
部員も全員女子だった。

全員女子というのは、男子もいるところや、全員男子というところとはまた違った雰囲気がある。
多少とも男子がいる場合は、女子は大人しくなるが、全員女子高生となると、元気がいいというか強くなるようだ。

やがて練習が始まった。
欠席者もなく、練習は普通に進んだ。
すると、何を目標にということになったが、吹奏楽部の場合はやはりコンクールという話が出てくる。
10年ぐらいは出場したことはなかったらしい。
それで、出場するということになった。
目標ができたせいか、まとまりも出てきた。

高校生の場合、少し大人になっているせいで、コンクールへの参加は中学生より神経を使わないで済む。

出てみると、どういうわけか1位で代表になってしまった。
念のために断っておくが、ここで私の指導がいいなんてことを言うつもりは全くない。
器の小さい人が読むと、すぐそういうところに目をつけるからである。
前にも言ったが、私は吹奏楽コンクールというものを、そんなに重要視していない。

ここで言いたいのは、代表になってどうのこうのということではない。
問題はその後のことである。

翌日、学校へいくと教頭がやや真剣な顔をして、私のところへやってきた。
開口一番

「ウチの学校は楽器なんか買えんからな」

だった。
そして

「会社を回っても、寄付なんかしてもらえん『お宅の学校だけじゃないですよ』と言われる」

などと、まるで、私が楽器を買ってくれとねだっているような口ぶりで、説得のような語り口でとくとくと話た。

私は、楽器を買って欲しいなんてひとことも言っていない。
そんなことより「ごくろうさんでしたね」と一言ぐらい、言ったらどうだと思った。

それが、常識的な言葉遣いではないのか?
私は「話の仕方」というものがわかっていない。これが生徒を導く先生かと思った。
口には出さなかったが
「あんたみたいな人が、お願いに行くから聞いてくれないんじゃないの?」
と思った。

最終的には、かなりの楽器が購入されたのだが、私は全く要望はしていない。

生徒たちは練習に慣れてくると、わがままが出てきた。
その内容は、ここでは紹介しないが、私はそのわがままを断固として聞き入れなかった。

理由は、頑張ればわがままは通せるということを身につけてはいけないと思ったからだ。
生徒の意見に耳を傾けることは大切だが、明らかにわがままとわかることは、許してはいけないと思う。
こういう感覚は、幼児が買い物の途中で母親におねだりをするのと同じような感じがする。
しかし、女子高生となると、幼児と違ってそのパワーはかなりのものである。

私が部員と何かもめている、ということを聞きつけた別な教頭がやってきた。
教頭は、私に妥協するように説得した。
私が妥協しないと思うと「ここまで作ってきたものを、今収めないとダメになってしまう」と何回も言った。

私は生徒を導くには、時には絶対に譲ってはいけないポイントというものがあると思っている。
嫌われようが何だろうが、間違っている路線に妥協しないようにしなければ、何のための指導者なのかということになる。
また、ここは譲るべきでないという自信を、現場で感じ取ることが指導者として力を発揮する場面だと思う。
だから、実践の場にいなくて「これこれはこうすべきものです」などと、何でもわかったような口をきく人は信用しない。教育の場に占い師は要らない。

教頭の説得に私は屈しなかった。
教頭のメンツは立たなかったかも知れない。

結果、どうなったかというと、生徒たちの方が謝ってきた。
私は怒って、しばらく練習へは行かないと言っておいた。

そうしたら、生徒たちだけでワイワイ議論していたららしい。
そして、結論は、先生にみんなで謝って復帰してもらうしかないということになった。

謝りたいので、来て下さいという連絡があったので、行ってみると、ドアを開けた瞬間全員がこちらを向いて頭を下げた。
何だか、私は体裁が悪かった。

私を説得に来た教頭は、私に会っても一言も何も言わなかった。
私は「どうだ、教頭」なんて言う気持ちは毛頭なかった。そんな失礼なことを言う気はない。
しかし、教頭は「やあ、よかった。君の言う通りだったな」ぐらいは言うべきではないのかと思った。
いや、そういうことを言って欲しいのではなく、教頭という上に立つ者はそういうべきでないのかと思ったのである。
ここでも、先生とはどうあるべきかという人格を感じた。

年度末になると、学校は就職のことで慌ただしくなってきた。
このところ、高校生の就職は難しくなってきている。

「就職先がなかったら進学する」という生徒の声も、何か変な時代だなあと違和感を持ったが、問題は進学もできないし、就職もできないという生徒だ。

私は就職係でもないので、何も心配することはなかったが、部員の中に進学もできない、就職もできそうもないという生徒がいた。
先生が大変心配していたので、つい「よかったら、私も力になりましょうか?」と言ってしまった。

余計なことと言われるかと思ったら「お願いします」と、渡りに船のように言われたので、すごく責任を感じた。
私とて、絶対就職させられるという自信があるわけでもなかった。

でも、言った以上はと思い、パソコンで援助しているある会社の重役に思い切ってお願いしてみた。
断られるかと思ったら、重役は少し考えていて

「その生徒は、ちゃんと通う生徒ですかねえ」

と言った。
即断るのは悪いと思って、少しクッションを置いたのかと思ったが、話しているうちにまんざらでもないという気がしてきた。
本当に、すぐ辞めてしまわないかという心配をしていたようだ。

そこで、私はその生徒を少し指導することにした。
通勤経路や定期券の買い方までしていた。
仕事は、あこがれの多い事務員だから問題はなかった。
学校に行くと、担当の先生に「雇ってもらえるそうです」と言ったら、大変喜んでくれた。

やれやれと思ったら、先生が私のところへやって来た。何を言うのかなと思ったら

「会社から学校に求人があると、就職希望の生徒には平等に知らせなければならないのです」

と言った。
なるほど、そうすると、必ずしも「あの生徒」が就職できると限らないのだ。
先生は、話を続けた。

sonkei.jpg「そこでですね」

「はあ」

「あの生徒を、会社から指名してもらえるようにお願いできませんか?」

ということだった。
その要望を聞き入れてもらって、その生徒はやっと就職が確定した。
まあ、それでいいのだが、吹奏楽部の顧問がやってきた。
お礼を言われるのかと思ったら、いきなり言われた言葉は

「あのう、吹奏楽部に入ると就職ができるという噂が立ってもまずいですから」

だった。
私としたら、それはないでしょうと言いたい。
まず、礼儀として一言「今回はありがとうございました」と言うべきではないかと思ったのである。
もちろん、そんなことを言って欲しいのではない。

大人としての当たり前の礼儀を知らない人が、先生をやっているということに違和感を持ったのである。

先生は先生である前に先生でなければならない

生徒は言葉で教わるだけでなく、日常触れ合う先生という人格からも学んでいくということを忘れていないかと思った次第である。

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posted by edlwiss at 23:08 | Comment(2) | TrackBack(0) | 教育研究
この記事へのコメント
dolceさん、こんばんは。
ご無沙汰しています。
春休みに入り、事務整理も終了して、ほっと一息つきました。
このブログの記事がとても気になりながら、
ゆっくり読むことができていなかったので、
今日、少し過去にさかのぼってじっくり読ませていただきました。
すると、共感できることが多くて、とても癒されました(笑)
今日の記事についても、私の周囲にもそのような先生方が多くて、
特に今年度は、とてもやるせない一年でした。
しかし、自分磨きのためには必要な出会いだったと思うことにして、
4月からは、そんな先生方は上手にスルーし、
心の器が広くて美しい自分になりたいと思っています。
そして、自分が年配になったとき、
深い愛情をもって生徒に接することができるようにしたいです。
・・・というのも、イライラが抑えられないことも多いので・・・^^;
また、若手の先生を温かく見守り、適切なアドバイスができる人になりたいと思います。
なんだか、作文のようになっていますが(笑)、
dolceさんの記事を読むと、自信の持てない背中を押していただいているようで、
元気がでます。新学期もがんばります!

ちなみに、少し前の記事で、Word以外のソフトについて、購入価値があると紹介して
くださっていますが、
とても、興味があります。どんなソフトなのか教えていただけませんか?

長々とすみません。春なのに寒い日が続いています。
お体には十分気をつけてくださいね。
Posted by kaori at 2011年03月31日 00:23
kaori さん、ごぶさたしております。
また、このブログのことを気にかけていただいてありがとうございます。

今日、人の寿命が伸びましたから、教師は定年後も長い人生があります。
定年は一つの通過点と考え、定年後も何か役に立つ人になれるように、在職中に実力をつける生き方がよいのではないかと思います。

私の知人、友人はそういう人がたくさんいます。
在職中に文学賞をとって、定年後も作家として活躍してみえる人もいますし、音楽の先生でコンサートで活躍してみえる人もいます。

勉強するには、教員はいい環境だと思いますので、Kaoriさんも現役中に力をつけてください。

文書作成ソフトについては、コメントではわかりにくいと思いますので、記事として紹介しようと思います。
ぜひ、そういうソフトを使えるようになっていただきたいと思います。
きっと、大きな力になると思います。奥は深いので、欲張らず少しずつ使える機能を使っていけばいいと思うます。
私がブログに載せる図はほとんど、それらを使っています。

今後ともよろしくお願いします。
Posted by dolce at 2011年03月31日 19:15
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